理数探求とは?新設された理由やいつから始まるか、テーマ例を解説!

2018年3月に高等学校学習指導要領が改訂されました。新しい学習指導要領では教科「理数」が新設され、そのなかに「理数探究」「理数探究基礎」という科目があります。

「探究」の名前の通り、理数探究は普通の授業と少し違って先生が生徒に座学で知識を教えるのではなく、生徒が主体的に学びを深めていく科目です。

今回は
・理数探究ってどんな科目?
・なぜ理数探究が必要なの?
・いつから開始されるの?
・なにを教えればいいの?

という先生に向けて新科目「理数探究」「理数探究基礎」について解説していきます。新教科が気になっている先生はぜひ、最後まで読んでみてください。

理数探究とは?

新しい高等学校学習指導要領で新設された教科「理数」。「理数」は「理数探究」と「理数探究基礎」の2つの科目から編成されていて、どちらも選択科目です。標準単位数は理数探究基礎が1、理数探究が2〜5になっています。

理数探究ってどんな科目?

理数探究では数学や理科についての課題を生徒が自分で設定し、観察や実験、調査を通して探究を行い、成果をまとめて発表を行います

他の科目のように、先生が生徒に知識を教えるのではなく、答えのわからない課題について先生はサポート役として助言する立場で関わります。

課題を決めて実験して、成果をまとめて発表と聞くと大学の研究のようです。私自身、理系大学院で研究をしていましたが、理数探究の内容は大学の研究とほぼ同じように感じます。予算や設備が大学と高校では違いますので、外部機関に力を借りたり、手作りしたりと限られた資源で進める工夫が必要になりそうです。

「理数探究基礎」と「理数探究」の違い

「理数探究基礎」は名前の通り、「理数探究」の土台となる科目です。「理数探究してみよう!」といきなりはじめようとしても、生徒はなにをしていいかわからないですよね。

理数探究をなぜやるのか、その意義とどうやって実験、観察、調査を進めたらよいか、発表の仕方、倫理などを学ぶのが理数探究基礎になります。理数探究をするための基礎知識を固める科目です。

理数探究では、実際に生徒が自分で課題を考え、実験、観察、調査を通して探究を進めていきます。

調査

なぜ理数探究が必要?

学習指導要領の改訂はグローバル化する社会、AIの台頭など技術がどんどん進歩していく「予測不可能な時代を生きていく力」を子どもたちに身に着けてほしいという思いが込められています。

今ある仕事が将来もあるとは限りません。私たち大人も不安になることは多いですよね。決まった知識を身につけるだけではなく、自分で考えて行動していく力が必要になってきています。

探究ではさまざまな課題に対して、柔軟な思考や発想で立ち向かっていく能力を育てます。社会の課題を解決するには新しい技術が必要で、理数探究によって技術を生み出す研究者の育成につながることも期待されています。

理数探究のモデルはSSHの取り組み

理数探究はもともとスーパーサイエンスハイスクール(SSH)で行われていた「課題研究」がモデルになっています。課題研究では生徒が自分の興味のある課題を設定し、実験、観察、研究を行い、成果を発表します。

課題研究の教育効果が広く認められていることから、今回の学習指導要領改訂に「理数探究」が組み込まれることになりました。

また、SSHだけでなく、部活の科学部で理数探究に近い取り組みが行われている学校もあるようです。高校生の発表セッションを設けている学会もあり、SSHだけでなく、科学部の高校生もレベルの高い研究発表をしています。導入する際の参考になるかもしれません。

実験

理数探究はいつから開始される?

理数は2022年入学者から開始されます。

「総合的な探究の時間」など一部の教科については通知で、新しい高等学校学習指導要領に移行することとされていますが、理数は含まれていません。

一方で、「総合的な探究の時間」を理数で代替することを予定している場合は、「総合的な探究の時間」を使って理数探究を行うことも良しとされています。

以下、移行措置の特例の概要と理数についての通知になります。

(1)従来の「総合的な学習の時間」を「総合的な探究の時間」に改め,新高等学校学習指導要領によることとしたこと。
(2)特別活動については,新高等学校学習指導要領によることとしたこと。
(3)地理歴史及び公民については,新高等学校学習指導要領の領土に関する規定を適用することとしたこと。
(4)家庭については,新高等学校学習指導要領の契約の重要性及び消費者保護の仕組みに関する規定の事項を加えて指導することとしたこと。
(5)保健体育,芸術,福祉,体育,音楽及び美術については,全部又は一部について新高等学校学習指導要領によることができることとしたこと。その際,学校教育法施行規則に示す福祉に属する科目として「福祉情報」を加えたこと。
各学科に共通する教科「理数」(以下「理数」という。)については移行措置を定めていないが,現行高等学校学習指導要領の下においても総合的な学習の時間の目標や内容に従い,数学的な手法や科学的な手法を用いて探究的な学習を行っている事例もあることから,平成34(2022)年度以降に理数に属する科目を開設し,総合的な探究の時間と代替することを検討している場合には,移行期間中の総合的な探究の時間の指導に当たり,数学的な手法や科学的な手法などを用いて探究を行うこともできること。

理数

理数探究で扱うテーマ

文部科学省よりSSHの取り組みをもとに理数探究の事例イメージが公開されています。
そのなかであがっていたテーマは下記になります。

ア 自然事象や社会的事象に関すること
・ダンゴムシの交替性転向反応はどのようにして起こるか
・酸性〜塩基性でムラサキキャベツ液の色を鮮やかに変化させる色素の成分を調べる
・筒をのぞくと見える不思議な模様を調べる
イ 先端科学や学際的領域に関すること
・銅樹のフラクタル成長の規則性を調べる
・周期的に色の変化を繰り返す化学反応について調べる
ウ 自然環境に関すること
・マツの葉の汚染率は空気中のちりの量の指標となるか
・新生代第四紀の地層から産出する化石を用いて,当時の環境を明らかにする
エ 科学技術に関すること
・風洞装置を使って紙飛行機の揚力について調べる
・窓の熱伝導によって夏の夜間の室温を効率的に下げる方法を探る
オ 数学的事象に関すること
・金平糖の角の形成過程の数理モデルを作成する
・新たな二項演算を見いだす

テーマだけでなく、実際の生徒の探究の概要と教師の助言例も掲載されています。助言では起こり得る可能性を教えたり、検証の方法について助言をしたりと、答えを教えるのではなく、あくまで考える方向を示していますね。

テーマについてもあくまで例で、生徒が自分で興味のある課題を設定することが探究を進めるうえで重要となります。

理数探究は先生ががんばりすぎてもうまくいかない!

理数探究の指導は座学の教科指導に比べて負担が大きいと言われています。予算的な課題を解決したり、外部との連携を検討したり、生徒を課題を見つけられるように助言したりと先生は考えなければいけないことが多いです。

一方で、先生ががんばりすぎてしまうと、生徒が自ら考える力や好奇心を育てるという本来の目的を達成できなくなってしまいます。

生徒に寄り添って、一緒に走るイメージで手助けしていきましょう!

参考
https://www.mext.go.jp/content/1407073_12_1_1_2.pdf

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