中学校キャリア教育の現状

中学校での大事な教育課程の1つがキャリア教育ですよね。キャリア教育の授業は中学生が自分の進路や将来を考え、行動するために欠かせない時間です。先生方の中にも、「生徒のためにキャリア教育を充実させたい!」と思っている方が多いはず。ただ、実際の学校現場では、先生方が忙しくて、キャリア教育の授業を考えるのに十分な時間を避けない現状があります。今日は、中学校におけるキャリア教育の現状や、その現状を改善するための案をいくつか紹介するので、貴校のキャリア教育の改善に少しでも役立てていただけたら幸いです。

中学校でのキャリア教育

まずは、中学校でキャリア教育をする目的を確認します。キャリア教育の授業や職場体験などは、学校の全体計画の中にすでに位置付けられています。その中で、キャリア教育の目的を確認するのは、キャリア教育の時間をよりよくするために大切です。定義を確認しつつ、目的も再確認していきましょう!

キャリア教育の定義と目的

文部科学省の中央教育審議会の答申によると、キャリア教育の定義は、
“一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育”とされています。

つまり、キャリア教育の目的は子どもたち一人ひとりのキャリア発達を支援し、子どもたちが自分らしく生きるために必要な能力や態度を育てることだということがわかります。

中学校では、
・暫定的自己理解と自己有用感の獲得
・興味・関心等に基づく職業観・勤労観の形成
・進路計画の立案と暫定的選択
・生き方や進路に関する現実的探索

キャリア教育を通して子どもたちにこれらのことを実現させることが求められており、
中学生が自分自身を理解して、興味のある職業を見つけ、実際に自分がどう生きたらいいのかを考えていけるように教員がサポートする必要があります。

この目的を達成させるために、キャリア教育の授業を組み立てていくことが大切だということですね。

中学校のキャリア教育の現状

実際、中学校のキャリア教育の現状はどのようなものなのでしょうか。
次に、中学校におけるキャリア教育の現状を紹介します。貴校と比較して違いがあるのかなどを考えながら読んでいただき、現状把握にいかしていただけると嬉しいです。

中学校のキャリア教育の現状①:全体年間計画の作成

中学校のキャリア教育の現状の1つ目は、年間計画がしっかりと作成されており、授業などが計画通りに進められている学校が多いということです。1年に何時間キャリアの授業があって、どんなテーマで授業を行うか、職場体験は何時間行う、職場体験の準備のために何時間使う…など、時間や大まかな内容が設定されています。そのため、先生方がキャリア教育の全体計画を把握し、見通しが持てる環境が整っています。また、キャリア教育担当の教員が配置されているので、授業作りなどで困ったときは相談することもできます。

中学校のキャリア教育の現状②:職場体験の実施

中学校のキャリア教育の現状の2つ目としては、ほとんどの学校が中学2年生で職場体験を実施しているということです。私が勤務した学校では2日間、中学校2年生が地域の職場で職場体験を経験していました。

先生方は、
・事前のアポイントメント
・職場体験前の生徒指導
・当日の生徒の様子を確認する
・まとめ作業のサポート
このように、職場体験をサポートしています。
国立教育政策研究所の資料によると、職場体験を中学校2年生で実施している学校は89.5%であり、職場体験を経験した9割の生徒が「有意義だった」と評価しているとのことです。

ほとんどの学校が職場体験学習を実施しており、この体験が中学校のキャリア教育のメインイベントになっているのが現状です。

職業体験

中学キャリア教育の現状における課題

中学校のキャリア教育の現状を確認した上で、見えてくる課題もあります。
ここからは、中学校におけるキャリア教育の現時点での課題を3つ紹介します。

中学キャリア教育の課題①:担当教員の負担と研修会の少なさ

中学キャリア教育の現状での課題の1つ目が、キャリア教育担当の教員の負担と研修機会の少なさです。国立教育政策研究所の資料によると、中学校の現状として、”ほぼ全ての学校にキャリア教育の担当者が配置されるが、在任期間は1年目が4割を占め、第3学年の学級担任との兼任も約4割に及んでいる”ということが明らかになっています。

つまり、キャリア教育担当教員は継続して、その学校のキャリア教育には携わっていないのが現状。これは、キャリア教育担当教員が変わることが多く、数年担当を続けて、計画、改善する…などというサイクルができていないということです。

さらに、キャリア教育に関する校内研修に参加したことのない担任は5割に及んでいるなど、先生方がキャリア教育について理解を深め、学校全体でキャリア教育を推進する!というのは難しいのが現状です。

中学キャリア教育の課題②:担任の裁量が大きい

また、キャリア教育全体計画は、学校で作成されていますが、実際の授業は担任や学年の裁量が大きいところも課題です。
例えば、初任で勤務をして、キャリア教育の研修も受けたことがない先生が、キャリアの授業を考えるのはかなり大変ですよね。
私も、初任校は小さい学校での勤務で、キャリア教育の進め方はほとんど担任裁量だったので、授業を考えるのに本当に苦労しました。

中学キャリア教育における課題③:リアルに将来を考える機会が少ない

中学校でのキャリア教育のメインともとらえられる「職場体験」は、生徒の満足度も高いですが、実際は「キャリア教育はほとんど職場体験のみ」という学校があるのも現状です。
職場体験は、その地域にある職場に限定されることも多く、田舎に住んでいる場合は、自分の興味のある仕事を体験できない場合もあります。自分の生きたい将来を考える上で、興味のあることについて深く知ったり、なりたい職業の方から話を聞いたりと、リアルに将来を考える機会が大事ですが、職場体験で終わってしまうことが多いのが今のキャリア教育の1つの課題です。

リアルにキャリアを考える

中学キャリア教育の課題を解決するには

では、最後に、中学校でのキャリア教育の課題解決のための方法を3つ紹介します。

中学キャリア教育の改善案①:校内行事や業務量の見直し

1つ目は、校内人事や業務量の見直しです。課題でも明らかになりましたが、キャリア教育担当教員の在任期間が1年と短かったり、3年生の担任が兼任することで、継続性してキャリア教育の計画や実践を考えたりすることが難しくなります。
そのため、校内行事の見直しや、負担軽減のための先生方の業務量を見直すなど、充実したキャリア教育を実施できる校内体制を整える必要があります。キャリア教育担当を1年ごとではなく、継続的に同じ先生にお願いすることで、長期間でキャリア教育の改善やさらなる充実を図ることができます。

中学キャリア教育の改善案②:キャリア教育についての校内研修の充実

2つ目は、キャリア教育についての校内研修の実施です。
中学校での課題として、校内研修が実施されていないなど、先生方がキャリア教育自体の理解が深められていないという事実があります。すべての先生方がキャリア教育についての理解や共通認識をもっていなければ、学校全体でキャリア教育に主体的に参加するのは難しくなってしまいます。そのため、定期的な校内研修で、キャリア教育について学ぶ時間を確保することで、学校全体のキャリア教育の改善につながります。

中学キャリア教育の改善案 ③:地域や外部講師の積極的な活用

最後に紹介する中学キャリア教育の改善案は、地域や外部講師の積極的な活用です。
教員が抱える悩みとして、
・キャリア教育の授業をしっかりと考える時間がない
・他の職業やキャリアについてもっと勉強する必要がある
・職場体験だけでは体験できないことを子どもたちに体験させてあげたい
このようなことが挙げられます。
これらの悩みを解決するために、地域人材や外部講師を招いて、その人にしかできないリアルな話をしてもらうことで、子どもたちが普段考える機会のないことを考え、自分の価値観を広げ、将来に向けて行動するきっかけになります。
教員自身の負担の軽減、そして生徒の興味にあった人材を選べるというメリットがあるので、外部講師を積極的に活用することも充実したキャリア教育につながります。

中学キャリア教育を活かして子どもたちの生きる力の育成を

今日は、中学校におけるキャリア教育の現状と課題、そして解決策を紹介しました!
キャリア教育は、子どもたちが自分の将来に真剣に向き合い、生きる原動力のきっかけにもなる大切な時間です。先生方全員でキャリア教育について考え、子どもたちが未来にわくわくするような授業を計画・実施できたら最高ですよね。
この記事が中学校の現状を把握し、貴校のキャリア教育がより充実するきっかけになると嬉しいです。

参考資料
キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査
キャリア教育の課題と今後の方向性
文部科学省 キャリア教育