「総合的な学習の時間で何をしたらいいのか、イマイチ分からない」
「他の学校の事例が知りたい」
総合的な学習の時間について、このような疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。
今回は、総合的な学習の時間の事例について、小学校・中学校・高校の例を1つずつご紹介します。
他校の事例を知ることで、何か新しい視点が発見できるかもしれません。総合的な学習の時間をどう進めるべきかお悩みの方はぜひ参考にしてください。
目次
総合的な学習の時間で育む力
文部科学省は、総合的な学習の時間を次のように定義しています。
“総合的な学習の時間は、変化の激しい社会に対応して、自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、よりよく問題を解決する資質や能力を育てることなどをねらいとすることから、思考力・判断力・表現力等が求められる「知識基盤社会」の時代においてますます重要な役割を果たすものである。”
引用:総合的な学習の時間:文部科学省 (mext.go.jp)
変化の激しい社会を生き抜くためには、自分から主体的に行動しつつ、問題に対応できる課題解決力が求められます。総合的な学習の時間では、それぞれの学校や地域の実情に合わせつつ、児童生徒の力を伸ばすための学びが行われるのが特徴です。
事例①小学校(町の伝統を発信)
小学4年「熊野筆調査隊」(熊野町立熊野第一小学校)
参考:小学校第4学年 総合的な学習の時間学習指導案 熊野筆調査隊 Part2
熊野第一小学校では、地域の伝統工芸品「熊野筆」に関する交流が毎年行われており、熊野筆を作ったり、運動会で「筆踊り」を踊ったりしていました。それらの体験を活かして、町の伝統を広められる「検定問題」を考え、他学年や他校の児童に発信する活動を実施しています。
<活動内容>
・筆踊りの体験
・筆まつり唄を調べる
・ゲストティーチャーにお礼状を書く
・筆作りや筆踊りを伝えていくためにできることを考える
・検定問題の作成に向けて、相手や目的を明確にする
・検定問題を作成し、検定本を作成
・検定問題を他学年・他校児童に発信
グループ活動をしながら、検定問題について「学年に応じた問題を出題できているか」「熊野筆に関するアンケート結果をもとに、適した問題を出せているか」などの改善を行っています。事前の活動によって、子どもたちが熊野筆への興味関心が非常に高いため、主体的に熊野筆の魅力を伝える活動が可能です。
事例②中学校(職場体験から学ぶ)
中学2年「プロフェッショナルに学ぶ」(下松市立末武中学校)
参考:職場体験学習「プロフェッショナルに学ぶ」
末武中学校では、例年2年生を対象に職場体験学習を行っています。職業観・勤労観の形成や社会的マナーの学習とともに、課題の解決に向けた探究活動を実施しています。生徒250人に対し、のべ105か所の事業所から協力を得ており、少人数グループで職業体験を受けることが可能です。
<活動内容>
・自分の長所や短所を見つめ、仕事への興味や適性を考える
・働くことの目的や意義を考える
・あいさつや言葉遣いなどのマナーを学ぶ
・体験学習(2日間、9~15時)、体験ノートに記録
・お礼状を書く
・体験を新聞形式にまとめ、発表会を実施
・文化祭で、劇を交えて職場体験の成果を発表
2日間の充実した職場体験をもとに、3人程度のグループでまとめ活動を行うため、生徒一人ひとりが活躍できる探究活動となります。これらの活動をもとに、2学期の後半には中学卒業後の進路について学習が行われます。
事例③高校(キャリア教育)
高校2年「系統的なキャリア教育を実践するための指導プラン」(岩手県立森岡商業高等学校)
参考:高等学校における系統的なキャリア教育を実践するための指導プランの作成に関する研究
森岡商業高等学校では、系統的なキャリア教育を実践するため、指導計画を4段階に分けて学習が行われました。
第一段階「自己を再認識する」…1時間
職業に関する基礎力診断テストによって、自分の能力や適性を見つめ直し、進路希望の実現に向けた課題の解決方法を考えます。
第二段階「職業を理解する」…9時間
社会人講話に参加し、実際に社会で活躍している人々から話を聞きます。生活・仕事上のさまざまな役割や意義を理解し、自分なりの勤労観・職業観を持てるようにするのがねらいです。その後、企業調査・研究を行い、企業活動や企業組織の基本的な理解を深めながら多角的に情報を集めます。
第三段階「職業・上級学校を体験する」…2時間
企業訪問によって勤労への認識を深め、自己を活かせる生き方や進路を現実的に考えられるように働きかけます。
第四段階「将来を再設計する」…6時間
企業訪問のまとめとして、お礼状の作成や振り返り、企業調査の研究と発表会が実施されました。
まとめ
総合的な学習の時間は、思考力や課題解決力など、よりよく問題を解決する資質や能力を育むことがねらいです。学校や地域にとって特色が大きく変わり、児童生徒の実情に合った学習内容を展開するケースが多いです。
小学校・中学校・高校で実施されていますが、どの校種でも「変化の激しい社会に対応できる力」を育むという点で共通しています。児童生徒がいつの日か社会人として活躍できるよう、充実した総合的な学習の時間を目指しましょう。
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