アクティブラーニングにおけるディスカッションの進め方

「ディスカッション授業が盛り上がらない……」
「よくわからないままディスカッションをしているけど、合っているのかわからない」

児童生徒が能動的に活動できるアクティブラーニングの一環として、ディスカッションの導入を目指す先生は多いです。思ったより成果が上がらず、苦戦している方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、アクティブラーニングにおけるディスカッションの進め方を解説します。話し合いを活性化させたい方の参考になれば幸いです。

アクティブラーニングのねらい

文部科学省は、アクティブラーニングを以下のように定義しています。

教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称。学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る。発見学習、問題解決学習、体験学習、調査学習等が含まれるが、教室内でのグループ・ディスカッション、ディベート、グループ・ワーク等も有効なアクティブ・ラーニングの方法である。

文部科学省 用語集 (mext.go.jp)

情報化・グローバル化が進んだ現代を生き抜くためには、自分たちで試行錯誤しながら問題解決する力が求められています。「生きる力」を育むためには、受け身的な講義形式の授業だけでなく、児童生徒が能動的に取り組める授業を合わせて行う必要があります。

アクティブラーニングによって期待できる効果(一例)

・自ら自ら進んで学習する力
・コミュケーション能力
・課題を見つけ、課題を解決する力

アクティブラーニングの方法(一例)

・ディスカッション…与えられた課題についてグループで討論し、結論を導き出す
・ディベート…与えられたテーマについて「賛成か反対か」を議論し、第三者が論理性や説得力を加味して判断する
・グループワーク…あるテーマについてグループで意見を出し合い、プレゼンや制作物などの形でアウトプットする

ディスカッションを行うことで、自分の意見を正しく伝えて説得するための論理的思考力が鍛えられます。また、他者の意見を引き出し、良好な話し合い活動につなげるコミュニケーション能力も養われるでしょう。

ディスカッション授業のポイント

ディスカッション

活発なディスカッション授業を行うためには、いくつかのポイントをおさえる必要があります。

議論しやすいテーマ選定

児童生徒が意見を出しやすいテーマであれば、さまざまな角度から議論が進んで活発な討論が行われます。児童生徒の実態や地域性を踏まえながら、興味がわきやすいテーマや身近に感じられるテーマを選定しましょう

制限時間を設定する

タイムスケジュールが明確であれば、意見のまとめに入る時間を逆算できるため、討論内容の意見集約ができるようになります。また、時間を守る意識をつけさせることで、話し合いの脱線を防ぎやすくなり、時間配分を考える力も備わります。

発言しやすい場を作る

全員が気兼ねなく発言できるような雰囲気づくりが大切です。「間違ったことを言っても大丈夫」「まずはお互いの意見を受け入れよう」といった空気感を、少しずつ作り上げていきましょう
討論の前に、ちょっとしたアイスブレイクを用いるのも1つの手です。最近嬉しかったことを紹介し合ったり、ちょっとしたミニゲームを取り入れたりしながら、お互いを受け入れられる居心地のよい空間作りを目指してください。

ディスカッション授業:事例①中学校

中学2年国語「言葉の力について考えよう」(徳島県立城ノ内中学校)
出典:アクティブ・ラーニング授業実践事例(1年国語科:徳島県立城ノ内中学校・高等学校)

単元の展開

  • 国語教材「空を見上げて」を読み、人の心を動かす言葉について考える
  • 言葉の力について自分なりに考える
  • グループディスカッションの進め方や深め方を学び、実践する
  • 話し合いで深められた自分の考えをまとめる

「言葉の力」について考えをまとめつつ、グループディスカッションによって理解を深めていく学習活動です。話し合いの方向性をとらえながら、相手の話を注意深く聞いて自分の考えをまとめることをねらいとしています。

ディスカッション授業の流れ

  • 模擬的なグループディスカッションを行う…司会者・発表者・記述者という役割分担を全員が経験
  • どのような質問によって話し合いが活発化したのかを確認…ディスカッションの深め方を考えさせる
  • 事前に生徒一人ひとりが考えた「言葉の力」についてグループディスカッションを行う…ふせんを使って比較しやすくする
  • グループディスカッションを経て深まった考えをまとめる

他者のさまざまな意見に触れることで、自分の考えを変容させながらさらに深められるのがディスカッションの魅力といえます。

ディスカッション授業:事例②高校

ディスカッションしている

高校1年保健「健康の保持増進と疾病の予防」福岡県立北筑高等学校
出典:アクティブ・ラーニング授業実践事例(高1保健:福岡県立北筑高等学校)

「喫煙、飲酒と健康」の学習展開

  • アイスブレイクとして、グループのメンバー内で1から4の番号を決める
  • 前回のディスカッション内容をグループ内で振り返り、班内で出た意見を確認する
  • 1回目のディスカッションを行う
  • グループを解散し、新たなグループで2回目のディスカッションを行う。元のグループで話し合った内容を共有しつつ、新たな意見はメモを取って元のグループに持ち帰る
  • 元のグループに戻り、新しく得た考えを共有し合う

元のグループのディスカッションによって考えをまとめつつ、別のグループの視点も取り入れることでさらに深い学びにつなげています。最後に元のグループに戻って意見を共有し合うため、メンバー全員が役割意識をもって主体的に活動できるのもポイントです。

まとめ

ディスカッション授業を活発にするには、テーマ選定やタイムスケジュール設定、発言しやすい雰囲気づくりが大切です。また、話し合いが活発化する質問を考えさせたり、別のグループでもディスカッションを行ったりすることで、より深い学びにつながります。

ディスカッションによって、主体的に学習する力や論理的思考力、コミュニケーション能力などが磨かれます。ディスカッションを活用して、困難な現代を生き抜くための力を伸ばしてあげてください。

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