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今現場で多忙を極めている教師であるあなたの頭の中に、片付けるべき仕事として「キャリア教育」という単語が浮かんできますか?
また改めて「キャリア教育とは何ですか?」「なぜキャリア教育は必要なのですか?」と問われて答えられる自信はありますか?
それよりも、日々の授業、生徒指導、部活動、学校行事などに関する仕事がぐるぐると頭を巡っているのではないでしょうか。また、どうしたら生徒の意欲ややる気を引き出せるかに悩んでいませんか?
ここで少しだけ立ち止まって「キャリア教育」について次のことを確認しておきましょう。まず「キャリア教育」の究極の目標は「生きる力の育成」であるということ。また「キャリア教育」は授業を始めとした全ての教育活動のねらいと深く関わっているということ。そう言われると少し考えを変えられるかも知れません。
文科省の「キャリア教育の手引き」によると、「キャリア教育」は次のように定義されています。「一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して,キャリア発達を促す教育」。また、この定義中の、「キャリア発達」とは「社会の中で自分の役割を果たしながら、自分らしい生き方を実現していく過程」とされています。
要約すると、「キャリア教育」の目標とは「将来に向けてより良く生きるためのキャリア発達を促す教育」であり、学校での全ての教育活動がその一端を担っていると言えます。
つまり、「日々の授業、生徒指導、部活動、学校行事など」すべてが「キャリア教育」であり、生徒のキャリア発達のために少しでも何かできないかと考えるだけで、生徒への接し方が変わり、意欲ややる気を引き出すことにつながっていくのです。
より具体的には、生徒が現在の自分をスタートとし、将来の人生設計である「キャリアデザイン」ができる力を身に付けさせることが意欲ややる気を引き出す大きな力となります。
ここでは、「キャリアデザイン」について、その定義や必要性、ポイントについて話を進めていきます。ぜひ、あなたの生徒に「キャリアデザイン」の意義をしっかり伝えて、「キャリアデザインが人生を変える!」ことを理解させ、意欲ややる気を引き出してください!
「キャリアデザイン」とは、「自分の生き方や働き方について具体的に構想し計画を立てること」で、まさに「キャリア教育」のねらいの根幹をなすものです。
しかし、現代の変化の激しい環境の中では、子どもたちは生き方のモデルや夢や希望を描くことが非常に困難です。その上、身体的には早熟傾向にあるものの、精神的・社会的な発達は遅れがちで、人間関係を築けない、意志決定ができない、自己肯定感が弱い、将来に希望が持てないなどの課題を抱えています。
そんな子どもたちに自分自身のよさに気づかせ、ポジティブに将来を切り開いていく指針を与えるのが、「キャリアデザイン」です。
人にはそれぞれ目指す人生の目標があります。そして、人生の節々にはさまざまなイベントが起こり、その時々に岐路があったり、判断を迫られたりとむずかしい場面も現れます。しかし、あらかじめそれらを想定し、現在の自分の力で乗り越えて行こうとするプランがあれば、対応の仕方も随分変わってきます。また、夢の実現にも近づきやすくなるでしょう。もちろん計画はあくまで計画であり、必要であれば途中で軌道修正することが簡単にできます。あるいは、過去に描いた計画を見ながら、そこから先の人生を描き直すことも書き加えることも可能です。
人生の設計図である「キャリアデザイン」は、まさに人生の伴侶とも言えます。
まだまだ経験が浅く未熟な中学生にとって、「自分の生き方や働き方について具体的に構想し計画を立てること」はかなり困難なことと思われます。(高校生にとっても困難です)しかし自分自身を正しく理解し、自分の強みや弱みを押さえながら人生をデザインすることには、単に夢を書き綴るのとは違う楽しさがあります。現在ある職種などの知識を得つつ働き方をシミュレーションしたり、進学や卒業、結婚や出産などのライフイベントについて具体的に考えられるからです。生徒が一度自分の人生を描いてみる良い機会と言えます。
まさに、「鉄は熱いうちに打て」であり、中学生(高校生)段階での「キャリアデザイン」は将来への夢や希望を描かせ、人生をポジティブに捉え、困難を乗り越えていこうとする姿勢の大切さに気づかせる絶好の機会と言えます。
「キャリアデザイン」は人生の設計図ですから、デザインを設計するにはそれなりの要素が必要です。ただ単に夢を描いて終わるというものにさせないために、留意するポイントを以下に3つ示します。
①スタート:自己分析で強み弱みを知り、今すべきことを明らかにさせる
まずは、自分の能力や自分が大事にしたい価値観を知ることが大切です。その際、才能診断ツールや友人に聞いて自分を客観的に知るなどの手立てを講じることも必要です。そして、得意を伸ばし不得意を克服するために、今何をすべきかを明らかにさせましょう。
②節々からゴールへ:将来ありたい姿を設計させる
何よりも大切な設計部分ですが、ただ単に目標を設定するのではなく、自分が好きなことや得意なことを含めながら自分がなりたい姿や将来の目標を書き出していくことが大切です。その際、学校の卒業や入学、もちろん就職が大きな節目になるので、あらかじめそれらを設定しておく必要があります。また、ゴールは人生の終焉とするのが一般的と思いますが、生徒によってまちまちとなるので、例えば80才まで生きると仮定してなどという設定の仕方もあるかと思います。
その際、自分のなりたい姿や理想像が具体的に設計できない場合は、「これだけは譲れない」という価値観や軸を書かせる工夫も必要です。
③節々に:ライフイベントや状況の変化も想定し、途中ですべきことを明らかにさせる
ライフイベントとしては、結婚や出産、家族との別れなどがあるかと思います。また、状況の変化として、転職や倒産、災害なども考えられます。全てに備えることはできませんが、考える機会を設けるのもいいでしょう。その際、自分ができることやそれまでしておくべきことなども考えさせましょう。
また、「キャリアデザイン」を人生の設計図とすると、さらにスモールステップでの進捗具合を確認していく道しるべがあると効果的です。それが「キャリアパスポート」と呼ばれているものです。小学校から高校までの作成例が多数示されていますので参考にしましょう。ポートフォリオとして利用するために、様式に一貫性があればよいでしょう。
「キャリアデザイン」は単に人生のイベントプランではありません。中学生(高校生)にとって、日々起こりうる困難に立ち向かうときに、この「キャリアデザイン」や「キャリアパスポート」に書き記したことが現実として押し寄せてきます。あらかじめ予想される困難に対しては、より具体的な対処法が記されるので、その克服に向けた計画的な取り組みが可能になります。
例えば、部活動でレギュラーなることを目標にした場合でも、なれなかった場合について思いを巡らす機会になります。
また、受験に対するプランでは、乗り越えるべき壁についてのアドバイスの受け方や乗り越え方について具体的に考える姿勢も育成され、不安だらけの受験から一歩進んだ対策が取れるようになります。
このような経験はその後の人生にも大いに生かされていくことでしょう。全てが計画的にいくわけでない現実を学ぶことで計画の大切さを知れば、その後の人生の発展に期待できます。
一枚の紙片に書かれたプランが深く心に刻まれ、ポジティブに人生に立ち向かう心を育て、その後の人生で大きく花を開かせる可能性があります。
ぜひとも教師も生徒もわくわくしながら「キャリアデザイン」を描く授業に取り組んでください。
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