「PBL授業で子どもの力を伸ばしたいけれど、授業がうまくいかない……」
このような悩みを抱えている人は少なくありません。
PBL授業は子どもの主体性や問題解決能力を育むのに効果的ですが、一般的な講義形式の授業よりも実践が難しいため、教師の負担は大きいです。今回は、PBL授業がうまくいかない原因や失敗例、効果的にPBL授業を行う方法を紹介します。
目次
課題の選択が難しい
子どもに「どうすれば解決できるのだろう?」という思いをもたせる課題は、見つけるのが大変難しいです。
グループ内で話し合いをするまでもなく答えが出てしまう課題では、子どもが飽きる原因となってしまいます。反対に、あまりにもハードルが高すぎると、進行次第では投げ出してしまう子どもやグループが出てくることも。
指導が難しい
子どもにどの程度アドバイスするべきか、判断が難しいところです。
話し合いが停滞しているグループに声を掛ける際は、興味喚起をしつつ議論を促す必要があるため、適切な言葉掛けが肝心です。また、グループでの話し合いや発表が苦手な子どもへのサポートは不可欠ですし、話し合いの内容が深まっているかを全グループ確認しながら動く必要もあります。
学習時間が足りない
講義形式の授業なら答えを教えるだけでしたが、PBL授業は答えを見つけるための手助けをする形なので、授業の目標まで到達するのに時間が掛かります。
話し合い活動や発表が盛り上がっても、時間配分をミスしてしまうと消化不良に終わってしまい、子どもの充実感は減りがちです。
グループでの活動に問題がある
子どものコミュニケーション能力が欠けていると、話し合い活動が進まなかったり、トラブルが起きたりして、授業本来の目的が果たせなくなってしまうことも。
人間関係の配慮も必要となるため、教師は指導内容だけでなく子どもたちの関係性も熟知している必要があります。
ここからは、大学で行われたアクティブラーニングの授業で発生した、失敗の事例を見ていきましょう。
グループワークへの姿勢の差がある
- 学習姿勢や態度にばらつきがあり、グループワークを人任せにする学生がいた。
- 話し合いの過程を無視して、成果だけを取り繕ってしまった。
- 教員の介入が足りておらず、意欲的な学生から不満が生じ、全体のやる気低下につながってしまった。
リーダー不在のグループへの支援不足
- 自発的に発言する学生がおらず、グループワークが成り立たなかった。
- 時間だけが過ぎ、ワークの成果も得られず、学生のモチベーションは大幅に低下した。
- グループワークが進めやすい課題を与えたり、役割分担させたりする必要があった。
教員が指示を出し過ぎてしまった
- 教員が成果を焦るあまり、学生に指示を出し過ぎてしまい、学生が指示待ちの状態に陥った。
- 指示待ちの状態になった学生は、突発的な問題への対応がうまくできなかった。
- 教員の指示が優先されるため、学生同士のつながりが希薄化した。
教員の関与度合いが低い
- 学生たちが低いレベルの最終成果で満足してしまった。
- 学生が自分たちの活動を客観的に評価する力を得られなかった。
- PBL教育の実施目的が適切に設定されていなかった。
参考:アクティブラーニング失敗事例ハンドブック(文部科学省)
段取りを適切に整える
PBL授業は、事前準備をどこまでできるかによって、得られる成果が大きく変わります。
子どもからどのような反応があり、どのような方策を提案してくるのかを事前にある程度予想し、方策が実行できるように準備しておくのが望ましいです。また、子ども同士の円滑なコミュニケーションが促せるグループ編成を組み、起こり得る問題を想定して活動に入るのが理想です。
何を目指すのかを明確にする
グループワーク中、何を目指すかのイメージができていないため、時間を浪費してしまうケースがあります。
授業の目的を周知したうえで、問題解決までのステップを明確にして、「今何をすべきか」「誰が何をすべきか」といった作業工程を立てやすいように配慮しましょう。
グループワークを定期的に実施する
話し合いや発表活動は、慣れないうちはうまくいかないものです。何度も繰り返して行えば、話し合いのコツがつかめ、発表方法も上達するでしょう。
ただし、同じようなPBL授業を単に繰り返すだけでは、マンネリ化する恐れがあります。小テストや事例紹介などを入れて、パターンを変えて行うのが理想です。また、数時間掛かりの大きな課題だけでなく、数分でできるペア学習やチーム学習を定期的に行い、コミュニケーションの取り方を学ばせましょう。
PBL授業は学習過程の数値化が難しく、評価をつけにくい学習方法です。
知識の習熟度はペーパーテストで評価できますが、問題解決の過程や話し合いへの参加度合いなどは、教員が授業内で適切に把握する必要があります。
主体的・協働的に活動に参加しているか、グループ内で互いのよさを生かそうとしているか等を見極めて記録しましょう。単元開始前に評価方法を明確にしておき、可能な限り多くの活動内容から評価するのが望ましいです。
発表を映像記録に残しておく、振り返りシートを活用するなど、できるだけデータとして再確認できるものを残しておくのが理想です。
PBL授業は、一般的な講義の授業に比べて課題の選択や指導が難しいため、失敗してしまうケースがあります。加えて、子どものコミュニケーション能力が未熟な場合、満足いくグループ活動の成果は得られにくいです。
PBL授業を効果的に行うには、事前準備の段取りをどこまでできるかがポイントとなります。グループワークの活動中には、「今何をすべきか」「誰が何をすべきか」といった見通しをもてるように、適度な助言が必要です。
グループ活動中、子どものやる気や姿勢の差が発生しがちですが、事前に円滑なコミュニケーションが促せるグループ編成を組みつつ、活動中にもフォローを入れるのが大切です。
教員にとっては負担の掛かるPBL授業ですが、子ども主体性や問題解決能力を養うために粘り強く取り組んでいきましょう。