新型コロナウイルスの流行をきっかけに、見直しが必要な学校行事が多いですよね。1年を通した行事の中で、規模が大きく、子ども達が1番楽しみにしているといっても過言ではないのが、修学旅行ではないでしょうか。
そんな修学旅行ですが、「中止になった」「行き先を大幅に変更しなくてはならなくなった」など、コロナの影響を大きく受けているのが現状。楽しみにしていた修学旅行が中止になり、悲しむ子ども達の様子を見て、辛い思いをしている先生方も多いはずです。
今回は、コロナ禍で修学旅行が実施できないからこそ生まれた「オンライン修学旅行」について紹介します。オンライン修学旅行と聞けば、生徒達が画面を見るだけで受け身になってしまうイメージを持つ先生も多いかもしれませんが、内容次第で充実した時間することが可能。5つの事例を紹介していきますので、コロナ禍で修学旅行のあり方を検討している先生の参考になると嬉しいです。
目次
「オンライン修学旅行」と聞いても、具体的なイメージが湧かない先生もいるのではないでしょうか。遠出をするのが難しいコロナ禍では、旅行会社がオンライン修学旅行の企画に力を入れており、さまざまなプランが用意されています。
例えば、JTBはVRを使った「バーチャル修学旅行360」というプランを提供。
VRを利用することで、旅行先の没入感あふれる映像を360度楽しむことができます。 プランには「京都奈良編」と「日光編」があり、「京都奈良編」では、VR映像で奈良のお寺等を楽しむだけではなく、工芸体験も行えます。
HISでは、学校向けの海外旅行オンライン体験ツアーを実施。旅行先の国には、オーストラリアやベトナム、カナダなどがあります。ベトナムでは、英語を活用した学校交流や、ベトナム戦争を経験した方の講和を聞く平和学習が可能です。カナダでは、現地のガイドと共にオンラインで街を歩きながら、カナダの街並みや文化を楽しめます。
オンライン修学旅行は、実際の旅行よりも価格を抑えられるのがメリットの一つ。受け身で映像を見るだけではなく、工芸体験をしたり、海外の生徒と英語で交流したりと、さまざまな体験が可能です。
ここからは、「イメージは沸いたけれど、実際にオンライン修学旅行を実施した学校の事例が知りたい!」という方に向けて、オンライン修学旅行を実施した5つの学校の事例を紹介していきますね!
新型コロナウイルスの影響で、「バスで行ける範囲で」という制限を受け、広島に行く予定を変更しなければならなかった奈良県のあすか野小学校。子ども達の残念そうな姿を見た担任の先生は、平和学習を兼ねてオンラインで広島への修学旅行を実施しました。
オンライン修学旅行を実施するにあたり、子ども達も主体的に活動。旅行の準備のために、交流先の小学校や広島電鉄とオンライン会議を実施したり、地域のデザイナーの協力を得てしおりを作成したりしました。
旅行当日は、360度写真を見たり、五日市小学校の6年生と交流をしたりと1人1台のタブレットPCを最大限に活用。想像力とデジタルの技術を活用し、子ども達が主体的に準備に携わりながら、オンライン修学旅行を実現しました。
高校生が自らオンライン修学旅行を立ち上げた事例もあります。長崎県の高校生は、ずっと楽しみにしていた修学旅行が中止になった悔しさを原動力に、8人の仲間と一緒にオンライン修学旅行を企画・運営しました。
高校生達はウェブサイトを立ち上げ、ポスターやチラシを作成し、ゲストへの依頼交渉などの準備に意欲的に取り組み、オンライン修学旅行を実現。
オンライン修学旅行の行き先は、長崎県でした。1日目はZOOMを使って長崎県に住む被爆者の方の講話を聞き、2日目には長崎県の高校生に撮影してもらった「解説付きの長崎ツアー動画」を視聴。ツアーでは、グラバー園や軍艦島などの観光スポットを巡ります。ZOOMのコメント欄では、長崎県の参加者から「長崎の豆知識」が送られてくるなど、タイムリーな交流もみられました。
3日目には、長崎大学核廃絶研究センターの教授からの特別講義を受講し、核兵器の情勢について理解を深めました。修学旅行の「夜の楽しみ」の雰囲気を再現するために、UNOや人狼ゲームをして遊ぶ参加セッションも開催。タメ口で笑い合うくらい仲良くなっていた参加者の様子もみられました。
2021年には「オンライン静岡修学旅行」を開催し、長崎への旅行と合わせて100人以上の中高生が参加するほどの規模になりました。
次からは、海外へのオンライン修学旅行を実施した事例を紹介します。東京都にある花の木小学校は、ZOOMを使ってシンガポールへの修学旅行を実施しました。本来は栃木県への修学旅行を予定していましたが、中止になり、落ち込む生徒を励ますためにPTA会長が発案したことがきっかけです。
当日は、オンライン修学旅行を手伝っているシンガポール在住の日本人学校教諭の協力を得て、シンガポールの名所を観光。大型モニターを使用したため、マーライオンなどの観光名所は迫力があり、子ども達から歓声があがりました。
日本人教諭は、シンガポールの社会や街並みを紹介しながら街を歩き、子ども達が事前に準備した質問にも映像を見せながら答えます。また、現地の子どもを呼び止めてインタビューをするなど、オンラインで繋がっているからこそできる対応も。
インターネットを通じて、現地の人との会話に挑戦するなど、例年とは違う経験となった修学旅行でした。
4つ目に紹介するオンライン修学旅行の事例は、山梨県にある小菅中学校の取り組みです。コロナウイルスの流行で中止になったオーストラリアへの修学旅行の代わりに、オーストラリアに住む同世代の生徒達とオンライン交流会を実施しました。
インターネットのテレビ会議を使用し、
- 村の特産品
- 好きな食べ物
- 部活動
- 日本のアニメ
などについて交流を実施。
日本のアニメの話題になると会話が盛り上がり、子ども達は「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」などの好きなキャラクターなどについて話し合い、笑顔を見せていました。交流会に参加した生徒は、「次もまた、アニメの話などをして交流を深めたい」と話しています。
最後に紹介するオンライン修学旅行の事例は、韓国観光社福岡支社がコロナ禍で修学旅行が延期・中止になった学校や学生を応援するために実施した取り組みです。
子ども達は、韓国のSDGsを中心に土地再生・歴史・グルメなどのテーマについて学習。現地とオンラインで繋がれた動画を見ながら、韓国の街を散策し、実際に韓国の工芸体験を行いました。
学校でSDGsについて学んでいる子ども達は、韓国の環境に配慮した都市開発に関心を示し、「自分たちも持続可能な開発目標SDGsについて学んでいるので、コロナが落ち着いたら、ぜひ現地を訪ねたい」と語っていました。
修学旅行後は、参加した子ども達と教員で学んだことについて議論する時間を設定。ある生徒からは「もっとお互いに交流をすることで、国際社会の現状を変えることができるのでは」という意見があり、オンライン修学旅行をきっかけに旅行先の国への関心を深めた様子が見られました。
今回は、コロナ禍だからこそ生まれた取り組みである「オンライン修学旅行」の5つの事例を紹介しました。「オンライン修学旅行」と聞いて、最初は「映像を見るだけなら子ども達が受け身になってしまう」と思った先生もいるかもしれませんが、
- タイムリーに旅行先の街を散策できる
- 現地の人と交流ができる
- 英語が活用できる
- 工芸体験ができる
など、計画次第で生徒が主体的に取り組むことが可能です。修学旅行が中止になり、安心して実施できる代替案を探している場合は、オンライン修学旅行を検討するのも1つの方法。
今回の記事が、先生方がこれからの修学旅行について考える上で、少しでも役に立てば嬉しいです!
<参考資料>
リアル×VR 新感覚体験プログラム「バーチャル修学旅行360」(JTB)
コロナで中止、諦めたくない 高校生がオンライン修学旅行を企画、長崎へ
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