1999年から本格的に進められてきた、キャリア教育。
そのキャリア教育の一環として導入している学校もある、「社会人講話」を知っていますか?
教員以外からの社会人から学生が話を聞く場である、社会人講話。今回は実践的なキャリア教育の入り口である、中学校での社会人講話について、お伝えしていきます!
目次
社会人講話を説明する前に、まずは中学校のキャリア教育を振り返りましょう。
中学校は、小学校よりも多くの他者に関わり、学生自身の生き方を模索し、理想を求める一方で、多くの中学生が初めての受験を経験する為、現実的な選択を求められるという難しい時期になります。まさに、理想と現実の狭間を初めて体験する時期です。
文科省は、キャリア教育を小学校から高校まで段階的に示していますが、中学校では、「現実的探索と暫定的選択の時期」にあると定めています。この段階での発達課題は以下のとおりです。
・肯定的自己理解と自己有用感の獲得
・興味・関心等に基づく勤労観・職業観の形成
・進路計画の立案と暫定的選択
・生き方や進路に関する現実的探索
さらに、文科省ではこの課題を達成する為の具体的な能力を挙げており、その中に様々な職業への理解から、自己の生き方を考えること、また職業体験や社会人講話等を通して,働く意義や働く人の考えを理解することを挙げています。
では、中学校のキャリア教育における、社会人講話とはなんでしょうか?
中学校のキャリアの手引書では、キャリア教育においての社会人講話とは、学生の勤労や職業に対する関心・意欲を高めること、また社会人が自己の能力や適性を生かして、社会の役割を果たしていることを学生に理解させることを目的にしています。
実際に、社会で働いている人を目で見て、耳で聞いてもらうことで、「働くとはなにか?」「社会とはなにか?」「自身の興味ある仕事は何か?」を考える、きっかけを作る場であるということです。というのも、職業に対する教育は未だ不足しているのが現状です。
実際に平成24年度の調査において、高等学校卒業までに職業を意識したことがない大学1年生が3割でした。大学進学という進路選択が将来的計画なく、行われていることが読み取れ、職業に対する関心を高めることが求められています。
中学では職業体験を導入している学校も数多くありますが、職業体験では1つの業界・業種のみしか体験することができない為、非常に限定的です。その為、様々な業界・業種での社会人講話を通して、職業に対する関心・意欲を高め、調べ学習で深掘りし、その上で学生自身に希望する職業体験を選択させることが、理想的なキャリア教育での流れとなります。
社会人講話を行う、適切な学年は1年後期〜2年生前期が適切です。中学校の学年別における、進路目標の具体例は以下の通り。
第1学年:進路探索を始めよう
第2学年:進路計画を立てよう
第3学年:進路選択をしよう
第1学年では自己理解と情報収集の時期となります。学級活動を通して、小学校よりも広いフィールドで自身の役割を認識し、また第2学年で行われる、職業体験の職場選択に向けて、身近な社会人へのインタビュー、また社会人講話等を通して、様々な職業を知ることが必要です。
第2学年では体験学習と進路計画の時期となります。第1学年で調べたことを元に、より関心のある職業を調べ、体験をします。調べ学習や体験学習を元に学生自身の将来像を描き、高校選択に繋げます。
第3学年では、進路選択の時期になります。担任や保護者との面談や説明会、上級学校での授業体験を通して、進路計画が現実的なのかを検証し、決定していくことになります。
学生自身の進路選択において、2.3学年では、収集した情報を具体的に落とし込む時期です。その為、キャリア教育での情報収集の一環となる、社会人講話は1学年または職業体験前の2学年で行うことを推奨します。
社会人講話の具体的な流れを説明します。社会人講話は、主に総合学習・特別活動で行います。
まず事前学習では、身近な人へのインタビューを行い、ワークシート記入を行い、発表。身近な人から職業観を知り得ることで、学生の職業に対する関心や興味を育むことが狙いです。
そして本時にて、実際に働いている社会人をゲストに呼び、働く意義や生きがいについての講話を行い、学生からの積極的な意見交換をします。学生が勤労観・職業観を理解し、職業に関する関心・興味を高めます。
さらに事後学習では、個別面談等を実施し、社会人講話等を通して、学生自身の勤労観・職業観や将来の夢について、ヒアリングを行い、学生の職業に対する価値観を抽出し、識職場体験の活動につなげていきます。
また社会人講話のポイントとしては、2つ。1つ目は、複数の社会人との関わりを創ることです。複数のゲストを呼ぶことで、様々な勤労観・職業観に触れることができ、学生がより多くの情報を得ることができます。
2つ目は、学生の状態を理解して、社会人講師を誘致することです。学生の進路選択状況や職業理解度を総合的に判断し、学生が共感や身近に感じ、具体的な将来像をイメージすることのできる講師を呼ぶことをお勧めします。
初めての進路選択となる、中学校のキャリア教育は、この時期から具体的な社会人像を描くことで、スムーズな高校選択につながります。その手段の一つとして、社会人講話を検討されてみてはいかがでしょうか? 講師については、希望するゲストや地域に応じた、派遣サービスもあるので、ぜひチェックしてみてください!
参考資料
・「中学校のキャリア教育の手引き」文科省
・「キャリア教育」資料集、研究・報告書・手引編、〔平成24年度版〕、国立教育政策研究所