キャリア教育の重要性が高まり、職場体験の充実が求められる中、「職場体験をどのように改善していけばいいのだろう?」と悩むことはありませんか?
学校によって特色があり、地域とのつながりもあるため、なかなか職場体験のあり方を変えるのが難しいのが現状です。
今回は、「中学生にとっての職場体験を、より充実させたい!」と思っている先生方に向けて、職場体験を充実させるためのポイントを紹介します。文部科学省が示している「職場体験のポイント」を元に紹介していくので、少しでも貴校の職場体験をよりよくするための参考になると嬉しいです。
目次
文部科学省によると、職場体験のポイントは7つに分けられています。
① ねらいの設定
② 実施計画の立案
③ 体験先、保護者との連携
④ 事前指導の充実
⑤ 実施期間中の指導体制
⑥ 事後指導の充実
⑦ 評価
職場体験のねらいの設定から、体験後の評価まで、全てが大切になる職場体験ですが、すべてを完璧にするのはなかなか大変ですよね。
この記事では、5つに絞って、中学校での職場体験を充実させるポイントを紹介していきます。
今回紹介する職場体験をより良いものにするためのポイントは、
① 体験を5日間実施する
② 事前指導を充実させる
③ 体験先の選択肢を充実させる
④ 体験中の指導の工夫をする
⑤ 事後指導を充実させる
これらの5つです。
私自身、教員として職場体験に携わることがあり、「ここは改善してよかった!」と思うことや、「もっとこうしたら改善するのに!」と思ったことがあるので、その思いも一緒に紹介していけたらと思います。
最初に紹介する職場体験充実のポイントは、体験の期間についてです。文部科学省では、5日間の体験の実施を推奨しています。
文部科学省のHPには、このような記載があります。
“充実した職場体験を実施するためには、ある程度の期間が必要ではないでしょうか。
5日間という長さにより、生徒の中にも心の葛藤が現れます。緊張の1日目、仕事を覚える2日目、慣れる3日目、考える4日目、感動の5日目・・・。人と触れ合う時間の長さが生徒一人一人の心に変容を与えます。”
私が勤務した中学校では、職場体験は短くて1日、長くて2日間でした。生徒の様子を観察していると、1日のみだと体験先の「お客さん」で終わってしまう印象がありました。2日間実施している学校では、生徒たちが少し仕事に慣れて、体験先の方とコミュニケーションをとれるようになってきたところで、体験が終わってしまう様子が見られました。
実際に、5日間の職場体験を実施するとなると、中学生を受け入れる体験先の方の協力や、授業の時数の調整などの課題があります。
しかし、職場体験を、生徒が真剣に仕事と向き合ったり、自分の将来について考えたりするためのきっかけにしたい場合は、5日間ほどの長さがちょうど良いのではないでしょうか。
できるだけ職場体験の期間を長く設定して、生徒が「働くこと」をリアルに体験できる環境づくりが、職場体験をより充実させるポイントの1つです。

2つ目に、確認しておきたいポイントが、職場体験の事前指導です。
職場体験を生徒にとってより充実したものにするためには、適切な事前指導が欠かせません。
事前学習は、例えば次のような目的で実施することができます。
・自己理解を深めて、自分の興味のあることや職業を見つける
・自分の将来や進路を具体的にデザインする
・職場体験で、どんなことを知りたいかを明確にする
・この職場体験が、自分にとってどんなメリットがあるかを理解する
中学1年生の時からの積み重ねや、2年生になってからの事前指導で、生徒の職場体験に対する取り組み姿勢はがらりと変わります。
自分が本当にやりたいことにつながる何かを得られるなら、生徒たちは積極的に体験に取り組むはずですよね。
「やらされている職場体験」から、「自分が目的を持って、自分のために参加する職場体験」だと生徒が感じて、体験にのぞめるような事前指導が、職場体験を充実させるポイントです。
体験中の指導も、中学校での職場体験を充実させるポイントの1つです。
文部科学省では、職場体験中の教員の指導について、
・生徒の変容を観察する
・生徒の不安なことや、困ったことを聞く
・体験先の方に、生徒の様子について聞く
これらのポイントが示されています。
これらの3つの中でも、職場体験中の生徒のサポートとして、不安なことや困ったことを聞いて、フィードバックをすることが生徒たちの安心感や、やる気につながります。短時間でも良いので、生徒たちの話を落ち着いて聞ける時間を設定することで、より充実した職場体験になるのではないでしょうか。

最後に紹介する職場体験充実のためのポイントは、職場体験が終わった後の指導の充実です。
職場体験の内容をレポートにしたり、発表したりする学校も多いですが、「体験したことを発表するだけ」にするのはせっかくの体験がもったいないですよね。職場体験で体験したことをいかに振り返って、自分自身への理解を深めたり、自分の将来設計の参考にしたりするのかが大切です。
体験先での経験が、3年生になってからの具体的な進路選択にも役立つ可能性があります。
体験後はその体験を発表するだけではなく、振り返って、自分の将来に活かせるような事後指導を計画することで、職場体験が生徒にとってより価値のある体験になります。
職場体験を中学校の生徒にとってより充実したものにするためには、「体験しただけ」で終わらせない職場体験にする工夫が必要です。
・体験期間の見直し
・事前指導の充実
・体験先の選択肢の充実
・体験中の指導の工夫
・事後指導の充実
これらのポイントの中で、貴校の職場体験の改善に活かせるものがあれば、参考にしていただけたら嬉しいです。
職場体験は、中学校生活の中で、生徒が実際に働くことを体験し、自分への理解を深める大切な機会です。生徒が自分の将来について主体的に考え、自分で未来を切り開いていくきっかけになる職場体験をさせてあげたいですね。
この記事が、貴校のよりよいキャリア教育実践の役に少しでも立てば幸いです。